このエントリーはOperaの開発者であるTim AltmanがOperaのDesktop Team Blogへ8月30日に投稿したFocus Areas during Kestrel Developmentを邦訳したものです。2ちゃんの子が訳してくれてっぞ
と言われ非常に虚しい気分になったのはいうまでもないのですが、まぁ折角なので公開しておきます。なお、このエントリーには誤訳が含まれる可能性があります。必要に応じて原典を参照し、誤訳を発見されたかたは是非ご連絡ください。また、この邦訳は厳密なものではありません。意訳です。
既にご存知かもしれませんが、Kestrel最初の公開アルファ版のリリースが次の火曜日、9月4日に計画されています。リリースの日まではあと2日あります。Kestrelから思い浮かぶことをお話しましょう。Kestrelの開発は一年を越えるものでした。2006年6月20日にコードがリポジトリに入れられたところから始まったのです。その時からいくつかの大きな機能の追加や数多くのバグの修正など、かつてない最高のOperaを作り上げるために開発が進められました。
今まで数ヶ月に渡りKestrelに関する情報を小出しにしてきました。しかし今、Kestrelに関して更なる情報をあらわにするときが来たのです。利用者の方々はOperaに対する様々な機能を提案してくださっていました。それらの機能のうちいくつかを今回は皆様にお届けすることができます。Kestrelでは特に「パフォーマンス」、「サイトの互換性」、「アクセシビリティ」、「OSとの調和」そして「Opera Mail」に焦点を当てています。
Operaは既に速いですが、私たちは今の速さに満足しません。ここ数年に渡って多数のパフォーマンスに関する問題に焦点を当て、より速く動作させようとしてきました。この問題については二つの成果をあげました。一つは新しいECMAscriptエンジン、もう一つはOpera Mailの新しい索引作成と保存のバックエンドです。新しいECMAscriptエンジンの計画は、ECMAscriptの開発を指揮している開発者が数年間暖めていたものでした。彼のプライドは最近伝えられ、異なるプログラミング言語マニア二人を楽しませることとなったのです。新たなECMAscriptエンジンは以前より少ないリソースで動作します。また、以前のエンジンに比べ多くの場合高速に動作しますが、今もなお一層のスピードアップを図っています。
Opera Mailも同じように進化しています。新しい索引作成と保存のバックエンドが必要とするメモリ使用量は少なくなり、ハードドライブへのアクセスもしばしば少なくなります。これによって基本的な機能の実行はより高速になるのです。また、Opera Mailが新着メールやニュースフィードを確認する際にコンピュータを固まらせていた件について、利用者の方から苦情が寄せられていました。この問題は過去のものとなります。メールチェックの処理は高速になり、索引や検索の結果は信頼のおけるものになります。
その他多くの部分で高速化がなされています。その結果、より高速にネットサーフィンすることができます。つまり、誰もが楽しくブラウジングできるということです。
「Operaは無料でないから……」という利用者の多くが抱いていた苦情に対する答えは、Opera 8.5のリリースで示すことができました。そして私たちは次に大きな苦情へ焦点を当てました。それは「サイトの互換性」です。一年以上前にOpera 9.0をリリースしてからは安定性を向上させるため、レンダリングエンジンの修正はそれほど多く行われませんでした。そして今、大々的にレンダリングエンジンを変更しようとしています。Operaのレンダリングエンジンに存在していた数多くのバグを修正しました。その成果は火曜日にお見せします。まだまだ修正の計画は残っていますし、繁雑になったソースを整理する必要もあります。アルファ版やベータ版を通してレンダリングエンジンの進化する様をご覧に入れるつもりです。
新たな機能の追加によって、サイトの互換性に関するいくつかの問題は解決されました。例えば、Kestrelではoverflow-x
やoverflow-y
といったCSSプロパティ、JavaScriptのGetter
やSetter
がサポートされます。また、リッチテキストエディタでは行改行やブロック改行がサポートされます。Googleが提供するいくつかのサイト、WordPressの標準テンプレート、さまざまなJavaScriptライブラリに於ける問題も修正されています。結局のところ、Operaはウェブブラウザの一つです。そして、Kestrelではより多くのサイトをより良く、高速に扱えるようになったのです。
Opera 7でスクリーンリーダのサポートが打ち切ってからというもの、私たちはその他の機能に注目し続けてきました。Kestrelは再びアクセシビリティに注目しています。Window-EyesやJaws、OS X向けのVoiceOverなどといったスクリーンリーダを実験的にサポートしました。また、ARIA (W3Cの提唱するリッチなウェブアプリケーションへのアクセシビリティを確保するための仕様)のサポートに対する取り組みも行われています。再び視覚に障碍を持つ方々にOperaを利用してもらうことができ、嬉しく思います。特にIBMのAaron Leventhal氏、Window-Eyesを製作したGW Micro社からは有益なご意見をいただきましたので御礼申し上げます。
アクセシビリティに対する取り組みはスクリーンリーダのサポートだけに留まりません。スペシャルナビゲーションは改善され、キーボードショートカットは新たなユーザにとって馴染みやすいものになりました。これは既存のキーボードショートカットに対して大きな変更を加えることとなります。しかしこれが最後の大整理となるでしょう。1キーショートカットを意図せずに使ってしまうユーザが多く存在しましたので、1や2キーによるタブの切り替えやzやxキーによるナビゲーションといった全ての1キーショートカットは標準で無効になっています。これらは設定で簡単に有効化できます。
Operaは複数のプラットフォームで動作するブラウザですが、どのプラットフォームでもしっくりくるものになるよう努力しています。Kestrelでも引き続きこれに取り組んでいます。OperaはVista上でもよりうまい具合に動作するようになりました。また、XPとVistaに於ける標準で利用するプログラムのダイアログはより良い形で統合されました。OS Xではよりネイティブアプリケーションに似た振る舞いをするようになりました。タブの扱いや標準フォントは改善され、ボタンは脈動するようになったのです。また、今回初めて64ビット版をリリースします。これによって64ビットのFree BSDやLinuxでも特別なことをせずにOperaを使うことができます。さらに、全てのプラットフォームにおいて標準アプリケーションの扱い(job handling)が改善されました。
Opera Mailは徹底的な整備(オーバーホール)の時期をとうに過ぎていました。Opera Mailが徹底的に整備される初期の段階をKestrelから見ることができるでしょう。先に述べたとおり、索引作成や保存のバックエンドは書き改められました。しかし、それだけではありません。Kestrelには新しいIMAPのバックエンドが搭載されます。これによって複数クライアントを利用していた際に生じていた問題など様々な問題が解決され、階層構造を持ったフォルダの表示も可能になります。メールパネルは新しくなり、草稿の処理も改善されました。Opera Mailは以前に比べて安定し、高速になり、バグが少なくなったのです。最初のリリースには多少荒削りな部分もあるでしょうが、最終的なリリースに向けて洗練させてゆきます。
Kestrelの心躍る変更点はこれで全てではありません。来週の公開をお楽しみに。なお、Kestrelに関する議論は#weeklyにて行われていますので是非ご参加ください。それでは良い週末を。そして火曜日にリリースされるKestrelに向けてゆっくりとお休みください。
この邦訳版を作成している時点でコメント欄にてTim Altmanがいくつかの質問に回答を寄せていますので、めぼしいものの概略を載せておきます。
再描画のバグはKestrelで修正されましたか?
いくつかは修正されましたが全てではありません。
CSS 3のborder-radius
による角丸は実装されますか?
(まだ)サポートされません。
アルファ段階であるということは重要なメールボックスに接続すべきでないことを意味していますか?
その通りです。アルファ段階においてはテストアカウントのみで利用すべきです。
他のブラウザと比較したベンチマークの結果を見せてください
まだベンチマークの準備ができていません。ECMAscriptのエンジンにはまだ最適化が必要なのです。
全ては火曜日に明らかになるよ。