PowerPointと版管理

なぜPowerPointは情報の蓄積を想定してデザインされていないのだろうか。最近は専らPowerPointと戯れる時を過ごしているのだが、使えば使うほどにそう思う。

PowerPointは発表資料をスライド単位で作ることに最適化されている。が、その完成したスライドは発表単位で管理される。他の発表資料を作成する際にスライドを共有する巧い手段は用意されていない。この齟齬がどうにも使いにくい要因に感じられる。

似ているけれど違う発表、微妙な修正が入った二回目の発表、過去数回の発表をまとめた短い発表。プレゼンの機会が多いPowerPointのヘビーユーザであればあるほどスライドを使い回す機会も増えると思う。が、スライドを使い回す方法はただ一つ、コピーしてくるしか無い。

スライドのコピーは、その発表間の結びつきという情報を失わせる。最も身近に生じる問題は修正が困難になることだろう。一方の発表で用いた資料にのみ修正を加えた場合、他方にその修正は反映されない。それはそれで正しいのかもしれないが、修正があったことすら知ることが出来ないのは不便である。

図形やテキストボックスの扱いを見るに、PowerPointは発表全体と言うよりはスライドを作成することを主眼に置いてデザインされているように感じる。そして位置づけからしてもそれは妥当に感じる。ただ、だからこそ不便さを強く感じる。

たとえば音楽ファイルとプレイリストの概念をそのまま持ち込んでみる。スライドファイルと発表で用いる流れリストファイル。同じスライドを何度も提示するようなケースでも無駄がなくなる。

おのおののスライドファイルにバージョン管理情報を付与してみる。流れリストファイルにはその時使うスライドファイルとそれぞれのバージョン情報を持たせる。それだけでスライドの更新や修正の情報を拾うことができる。

スライド単位で管理されていれば複数の発表で用いたスライドを混ぜて使うのも簡単。ただ流れリストファイルだけ作り替えてあげればいい。それだけで取捨選択できる。

スライドファイルが巧くメタに情報を保持していればスライドをマージしたときにも十分統一感を持った発表資料として完成させることができる。

だけれども、現実にはそうなっていない。せめて発表資料を作るときにスライドをシンボリックリンクのように呼び出せるようにならないだろうか。Microsoft Officeもそう遠くないうちにWebアプリケーションになる。現状のLive連携でそうなっていない以上あまり期待はできないのかもしれないけれど、いつの日かスライド単位で管理させて欲しい。それより早くスライドを用いた発表という形態が滅びているかもしれないが。

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公開日時
2010年3月3日 午前0時15分23秒
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