インタビューからOperaの見ているWebの未来を推測する

Operaのテッちゃんと冨田さんに対して行われたインタビューが思いの外面白かったので適当に引用しつつ書き留めておく。言うまでもなく、引用箇所をのぞいたすべてが僕の推測や憶測である。

蛇足だが、テッちゃんというOpera社最高責任者の愛称は本人のお墨付きである。

将来の使用環境

想像している未来は案外近いのだろうと感じさせる回答だった。

今後は、特に解像度が低いMID向けに最適化したようなものをベンダと協業していく方向

いずれにしてもPCよりも、まずデバイス

パソコンというただの汎用機にこれほど依存した社会は徐々に終焉を迎えて欲しい。そう願う僕としては応援せざるを得ない発言。尤も解像度に関してだけ言えば長期的には問題そのものが無くなるのでしょうけれど。

PCを持っているのは世界人口の20%に過ぎませんが、携帯電話端末は50%の人々が持っている

携帯電話端末って、思っている以上に普及しているんですね。なめてました。

高速化の方向

高速化の議論の流れは、バイトコードではなく、ネイティブコードに落とす方向です。ただ、インテル向けはいいのですが、ケータイなどARMアーキテクチャを考えると移植しないといけないので、まだ分かりません。パフォーマンスは上がるので選択肢として考えていますが。

ARMあたりでもネイティブコードに落とす方向で考えるあたりいいなぁと思った。

RIAプラットフォームとしてのHTML 5

はじめに断っておく。僕はRIAプラットフォームとしてHTML 5は不適当この上ないと思っている。若干の偏見を込めた表現だが、HTML 5は、ページベースの文書をマークアップするために最適化し、なんとかして既存のHTML文書リソースを生かせるようにアクセシビリティ確保を試みつつ、ユーザエージェント間の細かな挙動の差異を取り除こうとする取り組みだ。文書をマークアップするために最適化している以上、アプリケーションをマークアップするために最適化されることはあり得ない。はっきり言ってこんな言語で毎度毎度アプリケーションをマークアップさせられるというのであれば不幸なんて物ではない。と、そう思っている。ネットワーク環境が整い、Webアプリケーションだけに頼るなで述べたようなことが過去のことになった時には、文書向けのマークアップ言語とは別に何らかの適切な言語があってしかるべきだ。体裁を整えるためにCSSが使われることはあるかもしれない。だが、HTML 5を使うというのはアクセシビリティ面で足かせを課すだけにしか思えない。蛇足だが、ChromeがWebKitを採用したのもこのあたりが理由だと思っている。長期的に見たらページベースの文書で人間が処理する情報より、アプリケーションとして処理される情報の方が多くなるのは自明であり、そうあるべきだ。

……で、このインタビューでもRIAプラットフォームとしてのHTML 5という話が出てくる。

インタビューア
RIAプラットフォームとして考えると、HTML5は、まだ開発途上で使えません。Webブラウザでのサポートも進んでいません。例えば現状で映像を扱うとなれば、SilverlightやAIRになると思いますが。
テッツナー
Silverlightのような独自技術を使うと幅広いユーザーにリーチできません。少なくともマイクロソフトがSilverlightを提供するプラットフォームにしかリーチできません。まだSilverlightは、多くのプラットフォームでサポートされていませんし、普及もしていません。テレビやモバイル環境はどうですか? Webの技術を使えばより広い層にリーチできます。Flashはデスクトップなら90%以上の普及率かもしれませんが、モバイルでは?
プロプライエタリな(独自の)技術を使うと、その技術にロックインされてしまいます。ActiveXがいい例です。私が知る限り、ActiveXが広く使われている国が1つだけあります。韓国です。悪いことに、彼らはIE6の世界に閉じこめられています。IE7ですらありません。なぜなら、セキュリティ上の理由からIE7以降でActiveXを使うのは難しくなっているからです。
私が指摘したいのは、オープンな選択肢があるときに、そうでないものを使う理由はないということです。

テッちゃんはRIAプラットフォームとしてHTML 5が適当であるという発言はしていない。単にプロプラエタリな技術よりは良い、としか述べていないのだ。

インタビューア
HTML5のvideoタグはコーデックについては規程がありませんよね。ライセンスフリーの動画用コーデック「Theora」を採用するという話もありましたが、見送られました。互換性が心配です。W3Cの加盟企業の中にはコーデックを自社開発しているところもあるので、話が複雑です。
冨田
そこはまだ結論が出ていませんが、いずれにしてもオープンスタンダードで成り立つWebの世界が、RIA開発プラットフォームになれるのかが問われていて、そこが主戦場になるのかなと思っています。SilverlightやAIRが主流のRIAプラットフォームになってしまうと、今まで10年かけて培ってきたものが阻害されてしまう危険があります。
AIRやSilverlightのようなものがプラットフォームになると、それなしでアプリケーションやサービスが使えないという状況になってしまいます。テレビはどうする、ケータイはどうするとなったとき、プラグインがないから再生できませんということが起こり得ます。
ブラウザベンダが協力して、オープンスタンダードによって互換性を保ちながらRIAプラットフォームを実現していく必要があります。互換性を保ちつつ開発者のみなさんが求めるようなRIAプラットフォームになれるかどうか、それはHTML5に向けてわれわれブラウザベンダがやっていかなければいけないことです。

と思って読み進めていくと冨田さんの発言がちょっと微妙なところだったりする。尤もインタビューアの質問自体、HTML 5RIAに関する質問ではないし、深読みしても仕方ないのだけれど。

インタフェース設計

例えば、Operaの平均的ユーザーは起動時に20個のタブを開くというデータがあります。

これにはとりあえず笑った。とりあえず開きっぱなしなんだよ。昔誰が50枚もタブを開くんだ、なんて怒られたことがあったけれど、まぁ普通に開くんですよね。こればっかりはたぶん伝わらないと思う。そういう風にデザインされたソフトウェアを使わない限り。何が言いたいかというと僕みたいな変な人間はこういった統計結果が出ていることに安心感を覚えることができたんだよ、ということ。……違うけど。

インタビューア
Chromeには……(中略)……賢いスピードダイヤル機能など新しいアイデアがたくさんがあります。こうしたものをOperaで取り入れる予定はありますか?
テッツナー
われわれの考えでは、いつも同じ場所に同じアイコンがあるほうが、ユーザーの行動に合っていると思います。脳がパターンを認知する仕方からしても予測可能性があるほうが使いやすいはずだからです。

これ、昔僕も書いたなぁと思って検索してみたところ、案の定OperaのスピードダイヤルとFirefoxの拡張機能Speed Dialの記事中でちらりと書いていた。

Operaのスピードダイヤルはあくまでも3×3のマトリクス表示を頑なに意識し、サムネイルの表示場所で覚えさせようとしているように思える。

すべての物は何らかの意図を持って作成されているし、デザインされている。ぱっと見るとChromeの動的なスピードダイヤルは賢く見えるかもしれないし、人によってはそれによってリコメンドされるのを見て便利だと感じる。一方、Operaの固定されたスピードダイヤルではマウスを適当に動かすだけでいつものサイトにアクセスできる。どちらを取るかにその制作者の意図が感じられるというわけだ。

この文書の諸情報

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公開日時
2008年12月27日 午前0時02分36秒
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