判別するなら選択肢を提供せよ

Yahoo! Japanが導入したブラウザ振り分けについて中野さん石川さんのやりとりを拝見しました。理想は中野さんのおっしゃる通り、原則として標準仕様へ沿ったコンテンツを返す、という方式でしょう。しかしながら、古い環境の為に用意したのであろう、制限されたトップページはより多くの環境で表示可能であると期待されます。未知の環境に対してとりあえず表示できるコンテンツを返すという判断は、適当であるように感じます。従って、このように最新状況にキャッチアップしていくサイトにおいては、フォールバック対象を前方互換(つまり未知のブラウザ)よりも後方互換(化石ブラウザ)に絞るのは間違った判断だとはいいきれないという主張を支持します。理想的ではないけれど、現実的な解であることは確かです。

仮にYahoo! Japanの判別方法を真似て、完全に異なるコンテンツを返すサイトが現れれば、それは大きな問題です。しかしYahoo! Japanの返すトップページは制限され不便ですが、それだけです。それはとても不便ですが、最終的に欲しいコンテンツへ辿り着くことができます。判別方法には問題がありますが、無理に新しいコンテンツにまとめないという選択はアリだろうと思います。私は嫌いですが。

今回のリニューアルにおける致命的な問題は、制限されたコンテンツが返ってきた際に、理想的環境を取得する手段が用意されていないという点に尽きるでしょう。恐らくYahoo! Japanは、使えそうである環境を発見次第、即座に制限されたコンテンツを返さないように設定を変更するつもりなのだろうと思います。最新環境への対応が遅れるのであれば問題だと言わざるを得ませんが、今それを判断することはできません。

ちなみにYahoo! Japanは、推奨環境に名前を挙げていないOperaに対して、完全なコンテンツを返します。つまりYahoo! Japan自身が確認しない限り推奨環境と同等のコンテンツを返さないという方針ではないと推測できるのです。Operaについてはおそらく誰かが要望を出したのでしょうが、この対応はある程度期待できると考えています。

野嵜さんのOperaでは制限されたコンテンツが返ってきているそうです。現行のOperaはUser Agent名を標準で偽装しませんし、override.iniやbrowser.jsでもyahoo.co.jp向けの修正は入っていないようですから、何故そのような事が起こっているのか私には見当が付きません。(補註: 今更ながらyahoo.co.jpに対してyahoo.com向けの修正が誤爆している事に気付きました。かっこ悪いですね。)

少なくともYahoo! Japanは制限されたコンテンツを返すと同時に、制限されないコンテンツを取得するための方法を用意せねばならないでしょう。同一URIなのですから、一度制限されないコンテンツを選択したユーザに対してcookieを発行するなど、やりようは幾らでもあると言えます。新しいトップページに関するアンケートを行なっているようですから、要望を出すと良いでしょう。もちろん私も出しました。

同一URIで異なるコンテンツを返そうが、異なるURIへ転送しようが、返されるコンテンツの融通が利かなければ何も変わりません。もちろん機械処理の観点では全く異なります。しかし最大の目的は人間による閲覧であり、少々異なるコンテンツを返すことによる不具合は決して大きいとは言えません。

異なるURIで代替コンテンツを提供、つまり一部環境を転送するという手法には一つの難点があります。アドレス表示欄からコピーされ、それがリンクアンカーとして利用されてしまう時に、意図しないコンテンツを取得されてしまう可能性です。以前このサイトのContent negotiationlivedoorクリップを悩ませたこともありましたが、これはまさに意図しないコンテンツへのリンクが量産されてしまう一例です。なるべく多くの人に便利なコンテンツを使ってもらうことを考えるのであれば、同一URIで異なるコンテンツを返す方に理があるのです。それが便利であるからContent negotiationという仕組みが存在すると見ることもできるでしょう。きちんとURIを見てくれる閲覧者は残念ながらまだ少数派かと思います。(補註: そういった閲覧者が増えた時、はじめて別URIでコンテンツを公開すべきと言えるのではないでしょうか。)現状では「Yahoo! Japanのトップページ」というアンカーが指し示すコンテンツは閲覧者にとって1つに特定された方が良いと考えます。(補註: これは、双方向に転送することでも解決できる問題です。しかし使い勝手の悪いだけであれば、私は同一URIを与えても良いのではないかと考えています。)

極端な話、振り分けの方法、その結果はどうでも良いのです。利用者の事を考えるのであれば、これらの振り分けを無視する方法を用意する必要があります。それは似た環境に限った話ではありません。描画領域が極端に狭い環境や、回線速度が遅いと推測される環境に対しても、取得可能にしておく必要はあるのです。

どうやらYahoo! Japan側が何らかの対処を行なったようで、Minefieldなどでも参照できるようになっているようです。おそらくはGeckoのバージョンを見るように変更したのでしょう。試しにGecko系の風博士で表示させてみたところ、制限されたコンテンツが返ってきました。(補註: 手元の風博士のUA名はMozilla/5.0 (X11; Linux i686; U;) Gecko/0 Kazehakase/0.4.2 Debian/0.4.2-1。)

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公開日時
2008年1月2日 午後9時34分49秒
最終更新日時
2008年1月4日 午後1時15分32秒
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